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眠りの大切さを知るコラム

春は最適の睡眠環境

 春になると「春眠暁を覚えず」という文言をよく耳にします。唐詩選の孟浩然の春暁詩「春眠不覚暁、処処聞啼鳥」からの引用が、日本の四季にあったのか定着したようです。春になると、「春眠暁を覚えず」をタイトルにしたコラムがメディアでもよく企画され目にすることも多いでしょう。春の夜は、気持ち良くぐっすり眠ってしまうので、目が覚めたら、太陽は既に昇ってしまっていた。いたる所から鳥の鳴き声が聞こえる。もうすっかり明るい朝だったという意味のようです(他の解釈もあるようですが)。日本人の春の睡眠状態をよくあらわしているので、流布したものと考えられます。しかし最近では、春真っ盛りのはずの5月に熱中症になりそうな熱帯夜が続くことが多く、春先の気候と限定した方がよさそうです。一方で、日本人の四季の睡眠時間についての全国調査では、睡眠時間が長い季節は冬なのです。特に、高緯度で冬の日照時間が少なく寒い地方、たとえば秋田などでは、l0月から2月まで睡眠時間が長くなり、気分も落ち込み体重が増加する人が結構います。初秋から冬にかけて糖類等の炭水化物の摂取に対する嗜好性が上昇します。おいもなどの甘い物が欲しくなるようです。「天高く馬肥ゆる秋」は人間にも当てはまるのです。このような四季の変動の大きい人は、日本人のなかに13%ほどいて、女性に多いことも知られています。このような傾向は、海外の同じくらいの緯度にある国や地域でも見られています。人間の遺伝子の中に、まだ動物だったころの冬眠遺伝子が残っているのかもしれません。日照時間が少なくなり気温が一定以下の寒い状態になるとその遺伝子が発現してこのような状態を起こしているのかもしれません。一種の冬眠様の行動なのですね。なお日照時間とは、日の長さではなく、一日のうちで太陽が照っている時間をいいます。どんよりと曇った日や降雪の多い日本海側の冬の季節は、日照時間が少ないことになります。冬には寒冷刺激による筋肉の緊張の増加や皮膚表面の血流量の低下、交感神経系の機能亢進があり、睡眠中の深部体温も下がりにくく、日中の活動量も減少する傾向があります。北風の吹く寒い時期には、外であまり運動したいとは思わないですよね。さらに高齢者では、夜間のお手洗い覚醒の回数も増え、中途覚醒が多くなってしまいます。冬の睡眠時間は長いのですが、このような状態では、熟睡感は得られず、寝起きも悪くなることが多いのです。

 日本の四季のうちで、日照時間に関係する日長時間の変化が最も急激なのは3月から4月にかけてです。この季節には、気温も急激に上昇し、睡眠にとって適度な過ごしやすい温度になります。湿度も乾き過ぎず、べたつき過ぎず心地よい湿り気の日が多くなります。日本人の睡眠にとって最適の温湿度は、23℃前後で湿度が50~60%です。まさに、日本の春の環境温湿度です。

 冬へのリバウンドもあり春には気分が高揚し、日中の運動量も増加します。また、交感神経系の機能亢進状態も改善され、睡眠中の体熱の放散も盛んになり、睡眠の環境温もここちよい状態になっています。そのため、浅い睡眠が減り、冬に比べより深く眠ることができるようになるのです。メラトニンや性ホルモンなどの季節変動は、人間では十分には調べられていませんが、冬の方が夏にくらべて夜間のメラトニン分泌量が多いことが報告されています。冬のメラトニン分泌状況を引きずって、春でも朝の起床時までしっかりと分泌されている可能性は高いのです。メラトニンは覚醒を押さえ込む眠気ホルモンなのです。春に朝の起床時までグッスリと眠ることができるのも、メラトニンが影響しているのかもしれませんね。これらの結果、春には熟睡でき、朝の光が寝室に入ってきても覚醒することが少なく、「春眠暁を覚えず」と感じるようになるのでしょう。

 気象庁の発表によると2018年の5月の最高気温の平均は24.6℃で平均湿度は71%、6月は26.6℃で平均湿度は80%、7月は32.7℃で平均湿度は77%でした。1981年~2010年の平均は、5月の最高気温の平均は22.9℃で平均湿度は69%、6月は25.5℃で平均湿度は75%、7月は29.2℃で平均湿度は77%と報告されています。ここ数年は5月から暑い日が多くなってきていることが、気象庁のデータでもわかります。今年も昨年のように5月から暑い日が続き、6月になると夏日や熱帯夜が多くなると予想されています。4月のうちにしっかりと睡眠をとって、暑い夏を乗り切るための準備をしておいた方がよいでしょうね。

(提供:快眠コンソーシアム)